CopilotのGrokは既定オフ──Microsoftの契約外になるデータの扱いと管理者が決めること

Microsoftが米国時間2026年9月12日、Word・Excel・PowerPointのCopilotでSpaceXAIのAIモデル「Grok」を使えるようにするプレビューを始めたと発表しました。ただし使える組織は限られていて、管理者設定は最初からオフです。さらにMicrosoftの管理者向け文書には、Grokを使うとデータがMicrosoftの外で処理され、Microsoftの契約やデータ保護の約束が適用されないと書かれています。オンにする前に社内で何を決めておくべきかを整理します。
何が変わったか
Microsoftは公式ブログで、SpaceXAIのモデル群「Grok」を、Frontier(フロンティア)プログラムを通じてWord・Excel・PowerPointのCopilotに順次提供していると発表しました。Frontierは、正式公開前の新機能を先に試せる、組織単位の申し込み制プログラムです。今回は「顧客の声を集めるための限定的な提供」と位置づけられたプレビューです。
- ●対象アプリ:Word、Excel、PowerPoint
- ●対象者:Frontierに参加していて、条件を満たす組織のみ(プレビュー)
- ●除外地域:プレビュー期間中、EU・EFTA(欧州自由貿易連合)・英国では提供しない
- ●既定値:SpaceXAIのモデルを使うための専用の管理者設定があり、最初はオフになっている
- ●SpaceXAIをMicrosoftのオンラインサービスの委託先(サブプロセッサー)一覧に追加した
- ●今後の利用状況などを見て、他のCopilotの画面へ広げるかを判断するとしている
日本については、発表文で除外されているのはEU・EFTA・英国だけで、日本は除外されていません。一方で日本が対象だと明記した箇所もありません。Frontier限定の段階的な提供なので、日本での提供は未確定と考えてください。条件を満たしていても、順次提供のため画面にまだ出ていないことがあります。なお、発表文には画面のどこでGrokを選ぶのかは書かれていません。
いちばん大事なのはデータの扱いです。Microsoft Learn(管理者向けの公式文書)には、SpaceXAIのモデルを使うと、データはMicrosoftが管理する環境や監査の仕組みの外で処理されるため、Microsoftの製品条項やデータ保護補遺は適用されないと書かれています。データの保存場所の約束、監査・コンプライアンス要件、SLA(稼働率などの保証)、著作権に関する顧客保護の約束も適用されず、代わりにxAIの企業向け利用規約とデータ処理補遺が適用される、としています。
使うまでに必要なこと
Microsoft Learnに書かれている条件と手順は次のとおりです。社員が「Grokを使いたい」と言っても、管理者がここを通さない限り使えません。
- ●使う人にMicrosoft Copilotライセンス(旧称 Microsoft 365 Copilot)が割り当てられていること
- ●組織がFrontierに参加し、使う人がFrontierの対象になっていること(Frontierの設定はAI管理者・セキュリティ管理者・Office Apps管理者のいずれかの権限で行う)
- ●SpaceXAIを許可する作業はグローバル管理者の権限が必要
- 1Microsoft 365管理センターで「Copilot」→「設定」を開く
- 2「すべて表示」を選び、「AI providers for other large language models(他の大規模言語モデルのAIプロバイダー)」を開く
- 3「Available models for your organization」で「SpaceXAI」を選ぶ
- 4表示される規約(Legal terms)を読み、受け入れる場合だけ同意のチェックを入れる
- 5「Choose which users can access SpaceXAI models」で使える人やグループを選んで保存する
Microsoftは、接続の完了まで数時間かかることがあるとしています。使える人は個人単位のほか、Microsoft Entra IDのセキュリティグループ単位でも絞れます。やめるときは同じ画面で「No users」を選んで保存します。こちらも完全に止まるまで数時間かかることがあるとされています。
業務での使いどころ
今回の発表は「新しい作業ができるようになった」というより、「Word・Excel・PowerPointのCopilotで使うAIの選択肢が1つ増えた」という話です。中小企業の実務では、全員に一斉に開放するより、先に使ってよい仕事と使わない仕事を分けておくのが現実的です。
- ●向く:公開済みの情報をもとにした文章の下書き、アイデア出し、社外に出ても問題ない資料の構成づくり
- ●向く:同じ依頼を他のモデルと比べて、出来の違いを試す(ダミーデータで行う)
- ●向かない:顧客情報・個人情報・見積や原価などの社外秘が入ったファイル
- ●向かない:取引先との契約で、データを第三者に渡さない約束をしている業務
管理者が決めることは、次の3つに絞るとまとまりやすくなります。①そもそも自社でオンにするか、②オンにするなら誰に開放するか(まず数人の試験グループから)、③Grokに渡してよい情報・渡してはいけない情報の線引き。③を社内ルールの文書にするときは、次のプロンプトでたたき台を作れます。
あなたは中小企業の情報管理担当です。 社内のMicrosoft CopilotでSpaceXAIのGrokモデルを、数人の試験グループに限って使えるようにするか検討しています。 前提として、Microsoftの公式文書では、Grokを使うとデータはMicrosoftの管理する環境の外で処理され、Microsoftの製品条項やデータ保護補遺は適用されず、xAIの企業向け利用規約とデータ処理補遺が適用されると説明されています。 この前提で、次の構成の社内ルール案をA4用紙1枚程度で作ってください。 1. 目的と試験期間 2. 使ってよい人(試験グループ) 3. 入力してよい情報の例 4. 入力してはいけない情報の例(顧客情報、個人情報、取引先との契約で第三者提供を禁じている情報など) 5. 困ったとき・誤って入力したときの連絡先 6. 試験終了時に確認すること ・当社の業種は「(ここに業種)」です ・法律の判断が必要な箇所は断定せず[要確認:法務]と書いてください ・xAIの規約の中身は推測で書かず、[要確認:規約原文]と書いてください
最後の2行が大事です。書かないと、AIが規約の中身を推測でもっともらしく書いてしまうことがあります。規約の中身は、管理センターに出てくる原文で人が確認してください。
試すときに気をつけること
オンにする前に「どのデータを渡してよいか」を決める
Microsoft Learnには、Grokを使うとデータがMicrosoftの外で処理され、Microsoftの契約上の約束が適用されないと書かれています。一方、発表ブログには「SpaceXAIをサブプロセッサー一覧に追加した」とあり、2つの公式文書の書き方は同じではありません。自社の契約上どう扱われるかは、管理センターに出てくる規約の原文と、Microsoftの担当窓口で確認してから判断してください。確認が済むまでは、社外秘を入れない試験運用にとどめるのが安全です。
画面にGrokが出てこないとき
自分の設定の不具合とは限りません。Frontierに参加していない、SpaceXAIが許可されていない、許可したユーザーに入っていない、設定から数時間たっていない、順次提供でまだ届いていない、のいずれかが考えられます。日本での提供は発表文で明記されておらず未確定です(2026年9月13日時点、Microsoftの発表ブログとMicrosoft Learnの原文で確認)。
- ●開発者向けの「GitHub Copilot」とは別の製品なので、情報を探すときに混同しない
- ●既定でオンになっている他のAIモデルとは、データの扱いの条件が同じとは限らない。モデルごとにMicrosoft Learnの説明を読む
- ●試験が終わって使わないと決めたら、管理センターで「No users」に戻しておく
出典
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